2024年12月議会質疑①こどもまんなか社会:こどもの権利擁護
こどもの権利擁護
山田:日本が子どもの権利条約を批准してから今年で30年になりますが、なかなか子どもの権利が根付かず、子どもをめぐる人権侵害は極めて厳しい現状です。G7諸国の中で日本だけが若者の死因第一位が自殺です。虐待、性暴力、いじめ、不登校についても非常に深刻な状況です。
そんな中2023年4月施行となったこども基本法は子どもの権利条約の四つの原則①差別の禁止②子どもの最善の利益③生命・生存・成長の権利④意見表明とその尊重が盛り込まれました。そして、日本各地で子どもの権利をしっかり守っていこうという動きが非常に活発になっていて、今はいわば過渡期といえます。
1問目です。子ども基本法の中身に地方公共団体への責務等がありますが、どのような要請なのでしょうか?中身をお聞かせください。
豊中市:こども基本法では、地方自治体に対し、児童の権利に関する条約等の趣旨を踏まえた基本理念にのっとり、こども施策を策定・実施する義務を課しており、国の大綱及び都道府県こども計画を勘案し、市町村こども計画の策定に務めることとしています。
また、こども施策を策定・実施・評価するにあたっては、施策の対象となるこどもや子育て当事者等の意見を幅広く聴取し反映させるための必要な措置を講ずることが定められています。
山田:豊中市はその要請にどのように答えていくのでしょうか?教えてください。
豊中市:本市におきましては、こども基本法に先立ち、H25年4月に「豊中市子ども健やかはぐくみ条例」を制定しており、その趣旨はこども基本法と合致したものと考えております。このため、条例に基づき策定している「子育ち・子育て支援行動計画」をこども基本法に基づく市町村こども計画に位置付け、引き続き、こども基本法に基づく市町村こども計画に位置づけ、引き続き、こども施策を総合的に推進してまいります。
また、計画の策定・実施・評価に当たっては、こどもはもとより、子育て当事者、こども・子育て家庭を支援する機関・団体等に対して、アンケートやヒアリングなど様々な手法で意見聴取を行っており、これを試作立案等に生かすとともに、より意見のいいやすい環境で意見聴取できるよう取り組みの充実を図ってまいります。
山田:「より意見の言いやすい環境で意見聴取できるよう取り組みの充実をはかられる」、とのことですが、具体的にどのような取り組みをなさる予定なのでしょうか?お答えください。
豊中市:具体的な取り組みとしましては、例えば普段から居場所として通って
いるこども食堂などに出向き、信頼関係のできている支援者といっしょ
に話をする、あるいは、年齢の近い大学生などが聞き手となることによ
って、子どもが安心して、本当に言いたいことを、エンパワメントされ
ながら意見表明できるよう、こどもヒアリングの充実等を検討していま
す。
山田:では、豊中市子ども健やかはぐくみ条例の周知のためのリーフレットがありますが、概要に加えて中身について、どのような過程で作られたのでしょうか。お聞かせください。
豊中市:子どもに向けた条例周知のためのリーフレットについては、子ども自身に条例について知っていただくため、条例ば目指すものや市・保護者・地域等の役割のほか、子どもの人権の具体的内容について小中学校で行った条例出前講座や、条例制定のため実施したヒアリングで、実際に聞き取った子供や大人の言葉を活用しながら、子どもの立場に立ってわかりやすく紹介をしています。
また、子どもが、自分の人権が守られていないと感じたり困ったりしたときには、助けを求めることができること、市は一緒に解決するための方法を考えること、相談窓口の案内などを掲載しております。
山田:リーフレットには子どもの言葉が17例、大人の言葉が15例載っています。実際に 聞き取った子どもや大人の言葉はそれぞれ全部で何例か、選定は誰が、どのように行ったのか教えてください。
豊中市:リーフレットに掲載した言葉については、先ほど答弁いたしました
条例制定のためのヒアリングで、子どもはのべ約100人、大人はの
べ約150人から聴き取った言葉から、有識者の意見も踏まえて、市職員が選定したものでございます。
市の職員の方々が子どもの言葉100例の中から17例選定した
山田:このリーフレットの中で、子どもの言葉として紹介されている「大人には子どもの権利を大切にしてほしいけれど、子どもはそれをらんようしてはいけないと思うな」について、市は、11月に行われた「子ども審議会社会的養育推進のあり方検討部会」で、見直しをすると言う発言をされています。確認のために伺います。見直しをしていただけるということでよろしいでしょうか?
豊中市:この表現については、子どもから聴き取った言葉であり、権利について理解するための一側面としてとりあげたものですが、今年度子どもにとって理解しにくい表現ではないか、といった意見もあったことから、自分の権利と同じく、他の人の権利も大切だということが伝わる表現となるよう、子どもたちの意見を聞きながら、見直しを行ってまいります。
山田:当リーフレットの当該箇所について公益社団法人子ども情報研究センター共同代表田中文子さんはこのように見解を示しておられます。「人権・権利は正義をかざして、自分の思いどおりを通すことではないのですが、一般的には「権利を言うとわがままになる」というような理解が横行している現状です。だから、濫用という発想になるのでしょう。「人権・権利」は、相互の関係性を問い、対話により、関係性を作り直していこう、ということです。」また、国際こども権利センターシーライツ代表理事の「かいだまちこ」さんは著書の中で、「子どもの参加する権利が守られていない例として「子どもに権利を与えると我儘になる」などと間違った考えや思い込みが大人に根強くある」ということを指摘されています。
他に様々な有識者から豊中市のリーフレットの当該箇所について指摘が上がっているそうです。「子どもに権利を教えるのは全くもってマイナスではない」ので、見直しを行っていただけるとのことで、安心いたしました。子どもの言葉を採用すると言っても、最終的に市の職員が選定するわけですので、当該箇所のリニューアルの際には、しっかり責任を持って選定いただくよう要望しておきます。
7問目(最後)です。現在全国で子どもの権利保障をはかる総合的な条例を持つ自治体は69です。ちなみに豊中市はここには入っていません。この中の奈良市は、2021年12月に国内初の「ユニセフ日本型子どもにやさしいまちづくり事業、実践自治体として承認されました。この事業は、子どもの権利条約に明記される子どもの権利を実現することに市町村が積極的に取り組むという、ユニセフが提唱する世界的な活動です。豊中市も子どもの権利保障をはかる総合的な条例を作り、ユニセフ日本型子どもにやさしいまちづくり事業実践自治体を目指してはいかがでしょうか?見解をお聞かせください。
豊中市:本市においては、これまでも子どもの社会参加の促進や、こども自身が相談しやすい環境の整備、切れ目のない包括的支援体制の整備を進めてまいりました。現在策定中の第3期豊中市子育ち・子育て支援行動計画の重点施策に、子どもの意見表明機会のさらなる充実等を位置付け、子どもの参画を得て、子ども自身が社会参加について理解でき、意見表明しやすくするよう工夫を行いながら取組みを進めているところです。また、児童相談所設置に伴い、自らの処遇に係る意見聴取措置のほか、意見表明等支援事業を実施することとあわせ、令和7年4月設置の児童福祉審議会において、権利擁護の取組みを進めてまいります。今後とも、子どもの権利擁護の充実に向けて、奈良市など子どもの権利保障における先進事例などについても研究し、検討してまいります。
山田:意見要望です。豊中市のこれまでの数々の取り組み、特に子どもすこやかはぐくみ条例の設置には多大なるご尽力があったと聞いており、大変感謝しています。そしてまだまだ豊中市の取り組みはとどまることはないのだろうと思っています。子どもの権利保障における先進事例の研究、検討をしてくださるとのことで、大いに期待しています。