全国で起こっている上下水道料金値上の本質とは
豊中市、9月議会(定例会)で上下水道料金の値上可決
3月議会で否決になった上下水道料金の値上げが9月議会にて賛成多数で可決されてしまいました。(反対したのは山田、木村まこと議員、共産党議員団4名あわせて計6名※母数32名)
豊中市上下水道局は値上げの理由として、「人口減少等で水道給水量、下水排水量が減り、料金収入の減収が続いていて近い将来単年度赤字になってしまい資金もそこをついてしまう(上下水道局は独立採算の公営企業なので)からで、住民の理解を得たい」と説明します。しかし私はこの上下水道局が話す値上げの理由が全くもって本質に触れていないと考えます。国はこの20年間、増税を繰り返しながらも、財政緊縮政策の影響を上下水道事業にも及ばせていたのです。そして海外資本の大手水処理会社が日本の公営水道事業という巨大な利権を虎視眈々と狙っています。
要するに、この問題は「足りない分はみんなで少しずつ負担すればいいじゃないか、それこそが地域共生だ」とかいう話ではないのです。大きな利権が絡み、そして私たちの暮らしに必要不可欠な「水」が将来、今の水質を保ちながら当たり前のように使えなくなってしまうかもしれないという恐ろしい問題を孕んでいる、ということなのです。
水はいのちであり、基本的人権です。こどもたちにツケを残さないために値上げを受け入れるのではなく、今、私たちが当たり前のように使っているこの「水」を「子どもたちに今の形で残す」ために、民営化を止めるために何ができるのかを議論することこそが本質なのです。
そこで山田は先日2024年9月25日の本会議で上の論点にて下のように討論を行いました。
上下水道料金値上げ補正予算及び条例改正への反対討論
市議案第77号、78号、83号及び84号に反対の立場で討論します。
日本ではこの30年間で生活がどんどん悪くなっています。購買力の指標である実質賃金が先進諸国においては豊かに推移しているのに対して、日本では全く上がっていません。さらに物価高騰、電気代高騰で国民の生活はますます厳しいものになっています。
一方で国の水道事業予算の推移をみますと、2001年では1,807億円あったのが2023年度は補正を合わせてもわずか743億円です。国の水道事業予算が大幅に削減されてきたということがわかります。そして現在国は広域化、民営化の議論を盛んに行っています。大阪広域水道企業団運営協議会、運営方針等検討部会でも議論の内容は同様です。
財務省所管の特殊会社であるDBJ(日本政策投資銀行)は、2017年に、日本の水道事業者が抱える人口減少などの課題の解決策としてこういうことを「水道事業の将来予想と経営改革」で唱えています。
「まずは各事業者が今後の中長期的なシミュレーションを早期に実施し、将来的な厳しい経営の絵姿や、「誰が運営しても今後の料金値上げは不可避」という課題認識を、地域の関係者でしっかりと共有することが出発点として大変重要といえよう。そして、その上で、特にコンセッション等をはじめとする官民連携については、アップサイドの見込めない成熟型事業分野ではそのメリット等がわかりづらいところもあるが、水道料金値上げ等の地域の負担を「抑制」する意味で取り組む意義が大きいということを、地域の関係者でしっかりと共有することが肝要である。」
2018年に豊中市が行った経営のシミュレーションは非常に厳しめの経営の絵姿をうつしています。そのシミュレーションでは2021年に「当年度純損失」に転じ資金剰余金も10億7千3百万円と見積もっておられます。しかし実際は当年度純利益が4億8千2百万円、資金剰余金35億2千8百万円でした。上下水道局が行っているこの経営シミュレーションは実際の数字とかなり離れていたと言えます。上下水道局に問い合わせたところ、現在シミュレーションの精度をあげるご努力をなさっているとのことですので、さらに実数に近い形のシミュレーションに改善していただくよう引き続きお願いしたいと申し上げておきます。
将来的に厳しい経営の絵姿をかき、料金値上げは不可避だという課題認識を市民に植え付け、水道料金を値上げし、そのあとは広域化、そして官民連携という国が敷いたレールの上の出発点にまさに今、立っているのではないでしょうか?
まずはこの厳しすぎる経営シミュレーションを早期に見直していただきたいと、ここで要望しておきます。
国が今、おし進めようとしている官民連携の手法であるウォーターPPPやコンセッション方式は世界の動きと逆行しています。世界各国では250以上の自治体が再公営化に転じています。繰り返し申し上げます。国は料金値上げは不可避で、その解決策は官民連携だとしていますが、民営化で逆に水道料金が高騰するケースが各国で続出しました。水道事業の民営化は避けるべきなんです。コンセッション方式は民営化ではないという話もありますが、運営権の取扱いは民営化そのものだと言えます。
税金、保険料をはじめ充分高負担をしている市民の生活をさらに追い詰める、市民の痛みを伴うこの料金改定、福祉減免も豊中市にはありません。月々貯金すらできない、切り詰めている家庭にはどうやって暮らしていけというのでしょうか?
公共インフラの維持のために必要なお金は、当然一般財源から繰り入れるべきです。そのための自治体ではないのでしょうか。市民の命を守る水道・下水道の負担を軽減するのは自治体の優先的な使命です。地方公営企業法(経営の基本原則)第三条にも、地方公営企業の本来の目的は公共の福祉を増進することだと明記されています。また、市民の負担を増やさなければ補助金は出さないという国の脅しのような方針をくつがえしてください。3月定例会でも申し上げました、繰り返しますが今水道料金を上げるべきではありません。まずは「厳しい経営の絵姿だけ」でなく、「国や大阪広域水道企業団運営協議会での広域化や民営化の議論がある」ことを住民へ周知することが先だということを申し述べて私の討論といたします。