お腹を空かせたこどもを助けるのは公(行政)の仕事
先日Xで次のような投稿をしました。
「豊中市内に十分に食事を摂れていないこどもがいることについてこども未来部に話を聴いたらすごく人ごとで、とても悲しい気持ちになりました。民間団体が手を挙げてくれるのを待つんだそうです。要するに何もする気がないようです。行政は何のためにあるのでしょうか。 #豊中市」
これをみた市民の方から「何もやっていないのですか?ほんまなんですか?!」と役所に問い合わせがあったそうです。
なぜこのようなXを投稿したのか? もちろん、こども未来部(こども未来部こども支援課)に文字通り失望したからなんですが、その経緯をみなさまにここで説明させていただくと共に、投稿の翌日こども未来部の職員さんが補足説明にきてくださったのでその内容も付け加えさせてもらうことにしますね。
【ことのはじまりその1】〈誰もが行く場所で無料の食事提供さえあれば・・・〉
市議会議員をしている私ですが、保育園生と小学生のこどもの子育て中でもありますので、いろんな実情を耳にする。「うちの校区にもお昼までお腹ぺこぺこのこどもがいる」、そんな話も珍しくはない。「こども食堂や居場所があっても本当に深刻で支援が必要な家庭は居場所を利用しない」、そんな現場(こども食堂)の話も議員になってから幾度となく耳にした。
「そもそも、こども食堂ではなく市が公的に支援をすればいいのではないか、例えば学校で朝食を出すとか、、」
そう思ったのは10年間暮らしたカナダのトロントでの子育てを思い出したからだ。無償で通える幼稚園、小学校では毎日のようにクラッカーやチーズ、ヨーグルト、フルーツが無料で配られる。街には子育て支援センターがたくさんあり、ほぼ全ての施設で平日毎日クラッカーやチーズ、フルーツが無料で提供される。毎日野菜スープが出るところもあった。夜は日替わりで子育て支援センターが親子に夕食を提供していた(市内の子育て支援センターがかわるがわる運営して必ずどこかの支援センターが夜は夕食を提供するようになっていた)。利用者は貧困家庭だけではなく、仕事帰りに保育園に子どもを迎えに行った帰りの親子連れもいた。これらは全て公的な子育て支援だった。何が言いたいかというと、要は、誰でも利用できる場所で、誰が行ってもおかしくない場所での無料の食事提供であれば、深刻な問題を抱えていると周りに悟られずに利用することができますよね。
【ことのははじまりその2】〈子ども食堂をしてくれる民間団体を待つだけ・・・?〉
豊中市内のとあるこども食堂に見学にいった。驚くことに年間5,000食もこども達に無償提供しているそうだ。凄まじい需要。コストは120万円、なのに市からの補助金はマックスで30万円だ。さらに参加費や寄付を受け取れば補助金から引かれる仕組みだ。善意で地域の子どもを守ろうという方々がなんと自腹で運営している。「こんなに利用者が増えるとは想像もしていなかった、、、」と運営者のみなさんはおっしゃる。決して裕福とは言えない方々で、「たまに家賃支払いが滞ることもある、、、」とのお話を聞いて何か大きな間違いが起こっているなと感じずにはいられなかった。
というわけで、先日豊中市こども未来部こども支援課の職員のお二人と話をすることに。
聞きたかったのは、こども食堂を利用していないお腹をすかせたこどもについてどう対策をとるのかということと、善意でこども食堂を営んでおられるが、利用者が増えすぎて豊中市の居場所事業で出る補助金では賄いきれないという民間団体についてはどう対策するのかということだった。
回答は残念なものだった。「教育委員会の調べで朝食を食べていないこどもが一定数いることはわかっている」とした上で、「子ども食堂や学習支援など居場所事業に手を挙げてくださる民間団体には企業を紹介して寄付を募るなどスタートアップをサポートしているんです」と話す職員を前に思わず「ここはコンサルタント企業の会議室だったかな」と錯覚を起こす。いやいやここは役所だった。
ひとつのこども食堂で年間5,000食提供している話について見解を求めると、「経済困窮の家庭だけではなく、友達同士声を掛け合って遊びに行っている場合もある」とのこと。お腹が空いているのは利用者全員じゃない。だから費用全負担はしない、そういうことなのか。
【カナダではどうだったか?】
私はカナダのトロントで数年間子育てをした。トロントの行政の考え方はこうだった。
「10食出して1人のこどもが救われるなら10食無償提供する」
他方、豊中市はこうだと言いたいのかだろうか。
「10食出したら1人の子どもしか救われない。他の子は必要ないので補助金1割出す」
しかしこのひとりを探し出すのにたくさんの事務や人件コストがかかることはいうまでもない。
地方自治法が頭をよぎる
第一条の二 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本とする
税金は何に使われている?メタバースに500万円、、府に変わって万博の広告に2,000万円、行きたくないと答える国民が半数を超える万博へこどもを2回目無料招待に最大1億円、ローズ球場の工事、物価上昇の影響で補正予算1億円、、騒音がとんでもない伊丹空港の横に公園を作るのが20億円、、
これらは虐待、貧困で深刻な問題を抱えたこどもたちを守ることより優先事項なのだろうか。
【民間の善意に甘え、何もやる気がない豊中市】
6月から始まる「豊中型認定居場所」について聞いた時もこうだった
「問題を抱えるこども一人支援につなぐとそのこども一人頭1,000円」ということで、煩雑な事務作業をその程度のお金で賄えるのかどうか。そこについて考えを伺うと
「はい、ですので事務作業にかかる費用を賄わせていただきます。その他の費用については充てることができません」くらっとめまい。
気を取り直して違う質問を
「こども食堂がない地域についてはどうするんですか?」と聞くと
「手を挙げてくれる民間団体さんを発掘中です」との回答。
「やはり善意の市民に自腹で運営してもらうのはおかしくないですか?」と聞くと
「民間企業が出すこども食堂への補助金は色々あるんですよ」との回答。
この言葉に耳を疑った。民間が補助金を出すことを期待しているのかと。
「善意に甘んじてないか?市民は一体なんのために税金払ってるんだろう、、これでは税金泥棒ではないのか!?」
こども食堂を営む方の中には子育て中の夫婦もいる。何度もいうがこの方たちは決して裕福ではないのだ。
流石にこれはX投稿案件だと思い、冒頭のXを投稿させてもらった。そしたら私のXの投稿をみた市民から役所に連絡が入ったということだ。
【登録制の支援で見過ごされる虐待】
投稿の翌日、「補足説明をさせて欲しい」とのことで控室に職員二人がこられた(メンバーは一人が上席にかわっていた)。
こども支援事業について言い忘れていたとのことだった。
児童育成支援拠点事業というもので、市内に現在3カ所の居場所拠点がある。(南部に1ヶ所「いこっとホーム※委託先いこっと、北部に2ヶ所「人権平和センター豊中」「人権平和センター蛍池」※委託先人権文化まちづくり協会)
いこっとホームについては、登録した子どもに毎日食事を提供している(平日は夕食、土曜と長期休暇中は昼食と夕食)。人権平和センター両2ヶ所においては毎日ではないが食事の提供、そして学習支援などの居場所事業とのことだった。
各施設に1,400万円ほどの委託費を出しているそうだ(国費、府費負担が含まれる)。利用対象者は家庭に深刻な問題を抱えるこどもで、親の許可をとる登録制。開所時間は月曜日から金曜日は16時から21時、土曜日、長期休暇中は11時から21時。各施設利用者は一日約10人、登録者は約30人とのことだった。
この事業を拡充していく予定で、今年の秋にもう1カ所、来年度はさらに3カ所増やすとのことだ。
児童育成支援拠点事業の予算について、国から1/3、府から1/3ずつお金が出るそうで、それは取り組むに越したことはないし、豊中市はこの事業に関しては迅速に動いているらしく、それは素晴らしいことだと思った。しかしこれもまた登録制。虐待をしている親は問題がある家と知られたくない場合もある。深刻な問題を抱える家庭全てがこの事業に登録するわけではない。
特に深刻化している虐待の問題は、表に出にくい。だからこそ、分け隔てなく支援するべきなのではないか。今、市が取り組むべきは、支援拠点の補助金拡大、そして、声をあげられずにいるこどもたちのために、学校での朝、夕の軽食の提供も検討すべきではないか。対象者はそこにいるこども全て。(深刻な問題がなくても両親が朝早く仕事に出かけるために朝ごはんを食べていないこどももいる。これは経済状況の不安定さに起因するも多い。)
「何もしていないわけじゃない」と職員の方々が補足説明にこられた。何もしてないわけではないのは当然わかっている。でも、豊中市にいる支援が必要なこどもを全員助けて欲しいんです。全員を助けようとして、取りこぼしているならまだわかるのですが、全員を助けようとしているようには見えないんです。「スタートアップは補助して、あとは自力で寄付を集めて自立してもらって、こどもを助けたい民間企業があるのでご活用ください」と人ごとではなく、公(行政)が最後の一人まで責任をもつべきことではないでしょうか?
「高い税金を払っているのにどうしてこども食堂があるんだ?」
そんな市民の声を聞いたことがある。
【そういえばあの元首相も岸田首相も・・・】
豊中市だけじゃない。いまの岸田首相も同じようなものだ。
手前味噌だが、2024年3月5日参議院・予算委員会でれいわ新選組代表山本太郎は、被災した能登半島の炊き出し(供食数)が足りていない、と指摘した。「いまの自衛隊の供食数ではまったく食事数が足りない。足りてない分は自衛隊(行政)で補ってください。必要な食事は自衛隊が担保する。いかがでしょう?」と。すると、岸田首相はこう答えた。
「食事の確保は自衛隊だけで賄っているわけではありません。地元の自治体や民間ボランティアなどの関係者のみなさんが力を合わせて努力をしていただいています。自衛隊も最大限の努力をいたしますが、引き続き関係者のみなさまにご協力いただかなくてはなりません。政府もそれを最大限バックアップします」
まったく質問に応えていない。問われているのは、「国(行政)が奥能登の人々を、日本に生きる人々を守るかどうか」ということだ。日本に生きる人々を守ることくらい、日本という国がするべきだ。そのための税金でなければ、私たちはなんのために高い税金を払っているのだろう?民間ボランティアの善意に頼るだけなら、私たちは税金を払う必要はないはずだ。
国会での答弁を見たり市とやりとりしていて、私は今は亡き安倍元首相の言葉を思い出した。
日本の未来を担うみなさんへ
あなたは決してひとりではありません。
こども食堂でともにテーブルを囲んでくれるおじさん、おばさん。
学校で分からなかった勉強を助けてくれるお兄さん、お姉さん。
あなたが助けを求めて一歩ふみだせば、そばで支え、その手を導いてくれる人が必ずいます。
民間活力の有効利用、
単なる民間善意の搾取ではないか。
国も豊中市も同じような言い回しで、同じような言い逃れをする。
豊中市に話を戻すが、給食までお腹がぺこぺこで勉強に集中できるわけがない。想像しただけでいたたまれない。我が子がそうだったらどうか。職員の皆さんも痛みを感じておられるはずだ。
こども全員に届く支援、一刻も早く取り組んで欲しい。しかし、望んでいるだけでは何も変わらない。支援拡充のためにも、この窮状を豊中市民や大阪府民のみなさんにお伝えし、れいわ新選組の国会議員や他の市議会議員とも連携しつつ、豊中市に働きかけていきます。私がその先頭に立ちます。