CAPについて
CAPとは?
日本ではよく政治家が「子ども真ん中」と繰り返し謳いますが、子どもの人権が大切にされているとは言い難い状況です。先進諸国と比べても日本は教育、子育て施策への国家予算が十分ではありません。子どもの人権が守られていない状態がずっと続いているのです。そのような中、CAPのようなプログラムを全ての子どもたちに実施することが急がれます。子どもの人権教育や暴力防止の啓発はその効果が検証しづらいので後回しにされがちですが、先進諸国ではプライオリティとされるような、とても大事な取り組みです。
CAPは1978年にアメリカで生まれた、子どもに対するあらゆる暴力を防ぐための暴力防止プログラムです。
J-CAPTA(日本のCAPのトレーニングセンター)のCAPの説明は下記の通りです。
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CAP (Child Assault Prevention)
CAPとはChild Assault Prevention(子どもへの暴力防止)の頭文字をとったもので、こどもたちがいじめ、痴漢、誘拐、虐待、性暴力 といったさまざまな暴力から自分を守るための人権教育プログラムです。
子どもを対象にしたプログラム(子どもワークショップ)では、就学前、小学生、中学生、障がいのある子、 児童養護施設の子どもたちにそれぞれ発達段階にふさわしい寸劇、歌、人形劇、討論などを盛り込んで、 子どもを怖がらせることなく暴力防止の具体的対処法を教えます。
従来の「~してはいけません」式の危険防止教育とは根本的に異なり、「~することができるよ」と身を守るための行動選択を練習します。 安心、自信、自由の人権を子どもたちに繰り返し伝えることで、全ての子どもたちが本来持っている「生きる力」を引き出すプログラムです。
学校や保育園・幼稚園をキーステーションとして、子ども・教職員・保護者に研修ワークショップを提供します。
この子どもワークショップや研修ワークショップに参加した私自身の経験をふまえてご説明したいと思います。
CAPの子どもワークショップは参加型なので、クラス全体で意見を出し合い、時には近くの友達とディスカッションをしながら進行します。
まずは全ての人間が持つ権利について子どもと一緒に考えます。
「あんしん」「じしん」「じゆう」の3つの権利を軸に、人間が持つあらゆる権利について、どんなものがあるのかを話し合います。食べる権利、お風呂に入る権利、寝る権利、学ぶ権利、遊ぶ権利、意見を言う権利、安心して過ごす場所を持つ権利、などいろんな意見がでます。
次に子ども達と暴力について考えます。暴力とは先に話した権利を奪う行為だと、子ども達に伝えます。そしてどんな暴力があるのかを話し合います。殴る蹴るなどの身体的な暴力、心を傷つける言葉の暴力、いやな触り方をする、痴漢などの性的な暴力、教育虐待含む心理的虐待、身体的虐待、性的虐待、面前DV、ネグレクトなどの家庭での暴力、差別やストーカーなどの地域で起こる暴力、いじめ、体罰などの学校での暴力、他には連れ去りなど、考えつくあらゆる暴力を列挙します。
そして権利を奪うのが暴力で、暴力にあったら、権利を守る、取り返す方法を寸劇を通して考えます。
寸劇を通じて具体的にみせる
寸劇では暴力に対して我慢せずに「いやだ!」と言っていいこと、また、自分の身を守るためにとにかくその場を去る、逃げるための術を子ども達に具体的に伝えます。
そしてワークショップ全体を通して、「信頼できる大人に話すこと」を子どもに推奨します。両親だけでなく、祖父母、学校の先生、習い事の先生、近所の大人、友達の両親、、とにかく話をきいてくれる、信頼できる大人に伝えることを教えます。暴力は繰り返される場合もあります。暴力が起こったその場を切り抜けた後は大人が認知し、時には介入する必要があります。
そしてワークショップの後にあるのがトークタイムです。休憩時間に、別室で子どもたちがCAPのスペシャリストたちと個別に話す時間が設けられます。そこで虐待やいじめ、体罰などが発覚することもあるそうです。CAPはあくまでも暴力の予防であり、子どもが受けている暴力への介入につなぐ橋渡しまでが役割なので、ワークショップやトークタイムを通して万が一暴力の存在が発覚した場合は必ずその子どもに関わる信頼できる大人が誰かを、子どもと一緒に考え、その大人に伝える手段を伝えたり、あるいはその信頼できる大人にスペシャリストが直接報告します。
CAPは周りの大人を啓発する
CAPプログラムを子どもが受ける場合、必ず周りの大人を対象とするプログラムも実施します。暴力の防止はこども自身が力を発揮することも必要となりますが、サポートする大人の認識、ふるまいや言動もまた、鍵となるからです。こどもが大人に打ち明けてもその大人が適切な対処をしなければ意味がありません。対処法がわからず、結果的にこどもに沈黙を強いてしまう大人が少なくないのが現状です。日本では大人もまた、権利や暴力についての教育、啓発を受けていないので、どうすればいいのかわからないのです。
もちろん、大人向けのプログラムを開催して全ての大人が受講するわけではありませんので、少しずつ広げて行くという、草の根の活動となります。それでもゼロよりはずっといいと言えます。
頑丈な芽を育てよう
このように、CAPプログラムを開催する地域全体にこどもたちをあらゆる暴力から守るために不可欠である権利を守ることの大切さを教育し、啓発し、いわばCAPの種をまけば、子どもが沈黙しないための土壌を耕すことができます。土壌の養分は子どもが関わる大人の知識だったり、その大人のこどもへの適切な対応力だったり、聴く力であったりします。その養分で子どもたちの内なる力が育ち、簡単に暴力にさらされない頑丈な芽を土壌から出すことができます。踏まれても簡単に潰されないような芽です。CAPをツールとして子どものうちなる力を引き出す環境=「土壌を耕す」ことが十分可能だと思います。