9月議会質疑②「児童相談所職員の養成」
(9月議会一般質問質疑)児童相談所職員の養成
1問目
(山田)
来年度、豊中に児童相談所が設置されます。全国の児童相談所でさまざま問題がある中、児童相談所を設置するからには、こどもの権利擁護のために、職員の人員確保、資質の担保にはもっとも力を入れるべきです。まずは改めて、児童相談所の設置目的、基本的機能をそれぞれお答えください。加えて、それらを達成するために職員を対象に行う研修はどういったものなのか、具体的に教えてください。
(こども家庭支援監)
〇児童相談所は、子どもの福祉を図るとともに、その権利を擁護することを主たる目的としています。
本市は、「豊中市子ども健やか育み条例」の理念に則って、児童相談所とはぐくみセンターが両輪となって、児童虐待等の予防、支援、防止、介入、家族再統合支援までを、一貫して切れめなく行うことを目的に設置するものです。
児童相談所の機能は、子どもに関する家庭その他からの相談に対応する相談機能、必要に応じてこどもを家庭から離して保護する一時保護機能、児童福祉施設への入所や里親へ養育を委託するなどの措置機能の3つの基本的機能です。
〇児童相談所職員を対象とした研修としましては、子どもの面接・家族面接のロールプレイ、社会的養護における権利擁護など児童福祉司に係る法定研修のほか、豊中市子ども健やかはぐくみ条例の理念や市の子育て支援施策への理解を深める研修、特に配慮を要する児童等への面接技法や親子再統合支援に関するものなど、より専門性の高い知識や方法を身に着けるための研修などを考えております。
2問目
(山田)
児童相談所の基本的機能のうち、一時保護機能と措置機能においては権利擁護の取り組みがもっとも顕著に関わってきます。特に一時保護や措置の決定は子どもの将来を大きく左右します。過去に、「家に帰りたくない」と児相に訴えていた千葉県野田市の小学4年の女児が、一時保護を解除されて虐待死した事件がありました。この事件がきっかけとなり、子ども自身に関わる決定に子どもが自分の意見を有する主体として尊重されるべきだとして、こども家庭庁が、児童福祉法を2022年に改正し意見聴取等措置の義務化や意見表明等支援事業が制度化され、児童相談所設置自治体に『「こどもの権利擁護スタートアップマニュアル」及び「意見表明等支援員の養成のためのガイドライン」について』の通知を出しました。まずは義務化となった意見聴取等措置について、来年度に設置する本市児童相談所の運営において、誰がどのようにして子どもから意見聴取をする計画なのか、どのような仕組みで進めていくのかお答えください。
(こども家庭支援監)
〇意見聴取等措置については、令和 4 年の法改正により義務 付けられたもので、児童相談所が児童虐待の対応を行うに あたって、根幹となるものと考えております。子どもの育つ環境を左右するような重大な決定に際して、子どもの最善の利益を考慮するとともに、子どもの意見・意向を勘案して行うためのもので、子どもを権利の主体として尊重するものです。
〇具体的には、子どもを一時保護する、一時保護を終了して 在宅指導とする、または児童養護施設等への入所や里親へ 養育を委託するなどの措置を決定する際に、児童相談所の 担当職員が子どもの年齢、発達の状況などに応じて、必ず 意見聴取を行います。
(山田)
子どもの意見聴取は児童相談所の運営に当たり根幹となり、法改正で義務にもなっ
たということで、必ず行われるものだ、ということでした。
3問目
(山田)
子どもの意見を聴取するには子どもから信頼を得る必要がありますが、虐待を受けてきた子どもと職員の信頼関係はどのように作られるのでしょうか? 子どもの意見と、支援者が考える子どもの最善の利益が一致しない場合には、どのような考え方をするのかについても教えてください。
(こども家庭支援監)
〇信頼関係の構築については、虐待を受けた子どもの場合、 大人への不安や不信をかかえていることが多いため、まず は子どもに寄り添い、子どもの気持ちを受け止めることから始め、コミュニケーションを重ねることで、安心感が得 られるようにしていきます。
〇子どもの意見と児童相談所の意見が一致しない場合の考え方につきましては、まずは、子どもに自分自身のことを 自分の知らないところで決められたという思いを持たせ ないよう、子どもの意見又は意向を可能な限り尊重しながら、支援方針を決定することが重要であると考えます。ただし、子どもの意見にのみ従うことで、却って子どもの最 善の利益が図れない場合もあることから、充分な検討・議論が必要です。この結果と子どもの意見が一致しない場合もあるため、その場合には、子どもの置かれた状況や児童相談所の考えなど、決定の内容や理由について、丁寧にわかりやすく説明を尽くすことが重要と考えております。あわせて、あらたに、審議会を立ち上げ、権利擁護に係る専門部会を設置し、子どもの意見申し立てに対して、調査審議を行い、児童相談所等に対して意見具申を行う仕組みも 構築してまいります。
(山田)
子どもの意見聴取は、高い専門性を要するものです。
子ども家庭庁のガイドラインによると、例えば0歳の子どもにも非言語コミュニケーションを通して意見聴取等措置を行うとのことです。そして意見聴取等措置は原則、措置に先立って行われます。大変、専門性が高い業務となります。意見表明等支援事業の審議会を立ち上げられる、とのことで、この審議会が重要な役割を担うことになると思います。大いに期待いたします。
4問目
(山田)
子ども家庭庁のガイドラインによると、意見表明等支援員は児童相談所や施設、里親家庭からの独立性が求められるため、児童相談所や施設の職員、里親自身が担うことは想定されないということですが、意見表明等支援員の養成について現段階で市としてどうお考えですか?
委託する場合、委託先の候補はお考えでしょうか?
また、今年5月28日の毎日新聞記事によると、「意見表明等支援員」の配置事業を今年度、児童相談所を設置する全79の自治体のうち約8割に当たる61の自治体が実施することが明らかになっているそうです。大阪府内で児相と一時保護所を運営している大阪市と堺市ではすでに意見表明等支援事業の実施が始まっていますが、両市には見学に行かれたのでしょうか?さらに本市の意見表明等支援事業の実施時期についても見解をお聞かせください。
(こども家庭支援監)
〇意見表明等支援事業については、主として、子どもに寄り添い、意見の言いやすい環境をつくる事業であり、子ども の権利擁護の取組みを推進するため、非常に重要と認識し ております。
〇このため、まずは、児童相談所開設にあわせて、現在作成中の子どもの権利ノートで意見表明を含む子どもの権利 について説明を行った上で、担当職員がその意見、思いを 受け止めてまいります。そのうえで、子どもの意見表明をより進めるためには、専門的知見のある団体等への委託も有効な手段と考え
ていることから、既に事業実施している大阪市や堺市等から引き続き情報収集を行い、よりよい手 法や体制等について調査研究するなど、事業の早期の導入 に向け、積極的に検討を進めてまいります。
(山田)
情報収集、調査研究、検討をこれから進めていかれるとのことですが、意見
表明等支援事業については非常に重要だという認識をお持ちだということで
すので、しっかりお願いいたします。
ここからは意見要望です。
児童相談所は強い権限を持ち、子どもの将来を大きく左右します。
だからこそ「子どもが中心である」という理念の元に活動することが職員には求められ、新たに意見聴取等義務と意見表明等支援事業が規定されました。
意見表明等支援員の設置についても前向きに考えておられるとのことで、非常に重要な役割ですので仕組みづくりを頑張っていただきたいと思います。そして審議会を通しての不断のフィードバックが重要となります。子どもが信頼している地域の市民団体があれば、是非とも連携するなどして「豊中モデル」を作っていただきたいと要望しておきます。
かねてから、子どもの暴力防止を目的として、子どもの人権尊重を理念とし、子どもの内なる力を信じるエンパワメント、そして大人に正しい傾聴手段を教えるプログラムであるCAPを何度か紹介させていただいておりますが、児童相談所職員や要保護児童対策地域協議会に入っている職員に研修を実施されてはいかがでしょうか。豊中でも人権文化まちづくり協会において、児童養護施設はじめ、校区の子どもとおとなにCAP提供事業の実績があります。沖縄や新潟、群馬など、他の自治体でもさまざま取り組み事例がありますので、これについてもこの機会に是非ご検討いただきたいということも要望して、私の質問を終わります。