生命(いのち)の安全教育(性被害防止のための教育)について個人質問しました
生命(いのち)の安全教育とは文科省が推進する性被害・性加害を防ぐための性教育で2023年度より本格始動しました。「生命(いのち)の安全教育」、呼称からして、違和感があります。内容も一通り読みましたが、性被害・性加害を防ぐために一番大事な心臓部である人権についてすっ飛ばされています。よって、ツッコミどころは満載なんですが、やらないよりはいいだろう、ということです。 生命(いのち)の安全教育については一歩前進と捉えることにしましたが、そもそも日本は性教育後進国です。みなさんは文科省が定める小中学校の学習指導要領にある「はどめ規定」をご存知でしょうか?小学校で「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」、中学校で「妊娠の経過は取り扱わないものとする」と定めるものなんです。妊娠や受精の過程や経過を教えずに、高校生の性教育の授業で突然性病や避妊の話が出てくるということになります。どう考えてもおかしいですよね? 非常に危機感を覚え、9月議会での個人質問は性教育を取り上げることにしました。性被害の実情も知っておく必要があると考え、大阪SACHICOに視察に行きました(豊中には性被害ワンストップ支援センターがないので)。そこで驚愕することになるのでした。 大阪SACHICOは大阪府松原市内にある阪南中央病院にあります。病院の医師と連携をとりながら運営してきましたが、現在、産休などで医師の欠員が相次ぎ、今年9月から医療行為が以前のようにできなくなってしまったそうなんです。そもそも資金不足だという問題もあり、苦境に立たされていると。さらに話を聞けば、来所者の9%が9歳以下の子どもです。しかも支援に繋がるのは氷山の一角なんです。一体ここ大阪で、どれほどの子どもたちが深刻な性被害にあっているのだろうか、、 「ここの診察台に小さな子どもがのるんですが、、」と説明を受けながら診察台に目をやり、そこに小さな子どもが乗って脚を広げている光景を想像すると、心が引き裂かれる思いがしました。 表に出にくい性被害です。大人が被害者を見つけに行かなくてはなりません。SACHICOでの視察が終わり、9月議会の質問作りのために専門書を買いました。読むのもおぞましいほどの、幼児への虐待の実例がたくさん紹介されていました。SACHICOの視察でもそうでしたが、あまりにも心が苦しくて、議会で質問する日まで自分の心が持つのか?と何度も自問自答しました(実際個人質問をしながら涙ぐんでしまいました!大人が情けなくて、子どもたちに申し訳のない気持ちになりました)。最近まで住んでいたカナダではどうなっているのか、とリサーチするなど調査を進めてわかったこと。それは「日本はみすみす子どもを危険に晒していて、対策はほぼ皆無」だということです。親が言う、「知らない人について行ってはダメですよ」はあまり役に立たないのです。カナダでは常識となっています。なぜなら性被害の加害者のほとんどは顔見知りなのです。 そしてカナダでは、他人で顔見知りからの性被害をほぼ防げていることがわかりました。(家庭の中で起こっている性被害は日本であろうがカナダであろうが防ぐことが難しい、、) なんとかして、子どもたちを性被害から守りたい。そんな一心で質問に取り組みました。 少しの成果はありましたが、まだまだこれからです。豊中の子どもを性被害から守る取り組みを続けていきます。また、報告していきますね。 個人質問当日の質疑はここから下です。↓ いのちの安全教育 【山田】令和2年に実施された内閣府の性被害に関する調査で、20歳以上の女性の6.9%が不同意性交の被害経験があると答えています。この数字は少なくありません。性暴力被害者ワンストップ支援センター大阪SACHICOによると、大阪府の不同意性交被害件数は全国最多で、そのうち9%は9歳以下の子どもです。子どもの性暴力被害では家族からの性的虐待も少なくありませんが、最も多いのが他人からの被害で、そのうち7割が知り合いだと言うことです。加害者には教師、塾の講師、学童保育指導員、幼稚園・保育園の先生、近所の人、児童同士などが挙げられます。 一方、日本は残念ながら性教育後進国と言えます。学習指導要領による「はどめ規定」があり、世界では当たり前の人権に関わる適切な包括的性教育が実施されておりません。 さらに、みなさんにぜひ知っていただきたいのですが、豊中市において性被害者の救援時の連携機関として紹介される、性暴力被害者ワンストップ支援センター大阪SACHICOについて危機的な状況が伝えられています。このセンターは民間の阪南中央病院を拠点にしていますが、現在、資金不足によって苦境に立たされています。9月23日の新聞報道によると、阪南中央病院での診療が難しい場合、府内に10カ所ある協力病院のいずれかに仲介するが、SACHICOの支援員はほぼ付き添えないそうです。子どもが性被害を受けた際の面接では専門的な対応や、経験に基づいた診断能力などが求められることを考えると、本市を含む大阪全域が非常に不安な状況下に置かれているということになります。 これらの事態を鑑み、豊中市は性被害を防ぐ独自の取り組みをして行かねばなりません。これは子どもたちの安全を守る喫緊の課題と言えます。今月、市は「子育てしやすさNO.1をめざす」として、子ども政策の充実・強化を重点政策に位置付けましたが、その内容に子どもの性被害の防止策が盛り込まれていないのです。就学前からの身の安全を守るための性教育は多くの保護者も望んでいるところです。 質問です。性暴力から子どもを守るために、「いのちの安全教育」の実施状況を含め、市の見解と、取り組みの状況を教えてください。 【市民協働部】人権政策課では、小・中学校教員及び保育士等からなる男女平等教育推進協議会や専門家に意見をお伺いし、小・中学生向けジェンダー平等教育啓発電子教材「With you」を作成しました。この教材を活用し、子どもが被害者にも加害者にもならないよう、性暴力の防止に努めています。また、とよなか男女共同参画推進センターすてっぷが実施するジェンダー平等教育推進助成事業では、小・中学校の学年に応じた性教育のプログラム等を実施しています。 【こども未来部】就学前施設の「生命の安全教育」の実施状況についてですが、市内就学前施設の園看護師などの保健担当者が、年に1回、専門家による性教育に関する研修を受講しています。研修を受けた保健担当者は、各園において歳児に応じた指導計画を作成し、園児への保健指導を実施しており、子どもを性被害から守る大切な取り組みと認識しております。また、保護者に対しましては、いつでも性教育に関する絵本や専門書をご覧いただけるよう配架するなど、園ごとに工夫し啓発を行っています。 【教育委員会】小中学校における性に関する指導については、児童生徒の発達の段階に応じて、学校の教育活動全体を通じて行っています。小学校低学年においても、性暴力の当事者にしないための「生命の安全教育」が大切と認識しており、例えば、日常生活の場面を想定した事例を通して、自分と相手の体を大切にする態度を育成するなどの指導を行っています。 また、学年に応じて、性に関する絵本やジェンダー平等教育啓発電子教材「Wtih You」、文部科学省提供の「生命の安全教育」動画などの補助教材を活用したり、助産師の方など外部講師を招いたりする小学校もあり、様々な取り組みを進めています。 【山田】さまざま取り組みをなさっておられますが、就学前施設や学校によって濃淡があるのではないでしょうか。すてっぷの性教育のプログラムは先進的なものだと伺っております。今後も周知の徹底をお願いいたします。 とよなか人権文化まちづくり協会が外部助成金を核とした自主事業として子どもへの暴力防止プログラムCAPを3年間にわたり5中と、5中校区内の児童養護施設、こども園、小学校、18中で実施し、大きな成果をあげています。生徒、教師、保護者1,431人が受講しました。プログラムでは、子どもたちに人権について、「安心の権利」、「自信をもつ権利」、「自由の権利」、というわかりやすい言葉で伝えます。そして、その大切な権利が奪われたときには、「いやだと言っていい」、「逃げてもいい」、「信頼できる大人に相談してもいい」という具体的な解決方法を伝えます。子どもが自分の安全を自分で守るすべを身につけることは被害を防ぐために不可欠です。また、大人がこどもの気持ちを聴けるようになることも重要です。 質問です。ある小学校からCAPを導入したいと人権文化まちづくり協会に打診がありましたが、協会の自主事業予算の関係でお断りせざるを得なかったそうです。本市が主体となりこのCAPをすべての子どもたちに受けさせる取り組みを進めるべきだと思いますが、市の見解をお聞かせください。 【こども未来部】公立こども園では、友達子ども園において、豊中人権文化まちづくり協会で実施しているCAP就学前プログラムに参加しており、性暴力・誘拐・虐待といった様々な暴力から身を守ることへの意識醸成を進めております。 先に答弁いたしました取り組みと合わせて、CAPプログラムをはじめとする「生命の安全教育」をしない就学前施設において推進し、こどもの性的被害防止に努めて参ります。 【教育委員会】子どもがいじめ、虐待、性暴力などさまざまな暴力から自分の心とからだを守る暴力防止のための予防教育プログラムである「CAPプログラム」については、「とよなか人件文化まちづくり協会」の協力のもと、すでに実施している学校もあり、昨年2月にも教育委員会から全校を対象に情報提供を行っています。本プログラムの活用等も含めて、引き続き、生命の安全教育を各学校で工夫しながら実施し、その充実に努めることが大切と考えております。 【山田】意見要望です。CAPはいじめにも対応しています。豊中市の小学校のいじめの件数が令和3年度では503件、令和4年度では1,066件とわずか1年で倍以上に増加しています。なんとしても、CAPを導入し、子どもの性被害及びいじめの防止のために手立てを打つべきです。宝塚市では前市長のリーダーシップで、CAPを全小学校に実施したそうです。長内市長のご英断に期待いたします。 続いていのちの安全教育啓発教材について質問いたします。つい最近までカナダで子育てしていました。カナダでは子どもが性被害に合わないための取り組みが徹底されており、他人から子どもへの性被害が少ないだけではなく、保育園や幼稚園、学校、家庭でしっかりと教育を受けている子どもたちはプライベートゾーンは人前で出さないなどを守っています。ご参考までに、現在、カナダで使われている教材の一部をご覧になってください。正副議長の許可をいただき、資料を使用させていただきます。Side Books→豊中市議会→本会議→令和6年9月定例会→通告書→議場配布補足資料をご参照いただければと思います。いま、私の子どもたちが通う豊中の学校や保育園ではプライベートゾーンを出したり、クラスメイトのプライベートゾーンを触ったりするようなことがあると子どもから聞いております。日本では特に、保育士や教師の人数が少ないので子どもを守りきれません。文科省が今年度より全国の小中高において普及、展開をはかる「生命の安全教育」ですが、その教材内容は残念ながら不十分です。地域や保護者、保育、教育の現場で子どもの心身の安全を守る取り組みを向上させ るためにも、豊中市独自で、先進的な啓発教材が必要と考えます。豊中市が発行する、就学前の子どもも対象にした教材を、例えば「with you」の別冊版として作っていただきたいと思います。とよなか子育ち・子育て応援BOOK「みんなで」につきましても性被害防止を啓発する内容を盛り込んでいただきたいと思いますが、市の見解をお聞かせください。 【市民協働部】「With You」は、小・中学校で使用する副教材として作成したもので、就学前の子どもも対象に含んだ別冊版を作成する考えはございません。今後も、「With You」を活用し、子どもが性暴力の被害者にも加害者にもならないよう、性暴力の防止に努めてまいります。 【こども未来部】とよなか子育ち・子育て応援BOOK「みんなで」は、妊娠期を含む保護者を対象とした健康・相談・就学前施設などの情報誌で、子育て世代にご活用いただいています。幼児期からの性被害防止の啓発は大切と考えておりますので、「みんなで」への保護者向け掲載につきまして検討してまいります。 【山田】市民協働部の答弁についてですが、がっかりいたしました。大阪府の不同意性交被害者のうち9%が9歳以下の子どもなんですよ。就学前の子どもも被害にあっているんですよ。豊中市に、性被害にあっている幼児がどれほどいるのか、計り知れないんです。就学前の子どもには人権はないんでしょうか?心無い答弁だったかと思います。子どもへの性教育は早ければ早いほどいい、というのがグローバルスタンダードです。就学前の子どもをも対象とした副教材を一刻も早く作成していただくよう、強く要望いたします。 豊中市は2013年4月に「子どもすこやかはぐくみ条例」という、素晴らしい条例を施行しました。みなさまのご尽力に敬意を表したいと思います。前文を一部読み上げます。「子どもは生まれながらにして、一人一人が個性ある人格を持ったかけがえのない存在であり、権利の主体として、いかなる差別も受けることなく、その尊厳が重んじられ、人権が尊重されなければなりません。特に、安心して生きること、あらゆる暴力や虐待、いじめなどから守られること、自分らしく育つこと、自分の思いや意見を表明できることが大切にされなければなりません。」と書かれています。 施策は市から市民へのメッセージです。見つけにくいですが、性暴力に苦しむ子どもたちが実際にいるのは事実です。周りに守ってくれる人がいなかったら、なんとか自分の「力」で身を守って無事でいてね、あなたの味方だよ、なんとかして見つけ出して支援に繋げるからと、愛のあるメッセージを施策を通して、豊中市から子どもたちに出しいただきたいと強く要望して私の質問を終わります。